「ファーゴ=サンタ問題」を考える

 コーエン兄弟の『ファーゴ』という映画があります。そのスピンオフ的な作品として、ノア・ホーリーが手掛ける『FARGO/ファーゴ』というドラマもあります。どちらも名作ですよね。個人的には、映画よりもドラマの方が好きで、あの世界観とストーリーは堪らなく大好きなんです。

 

 ですが、私には『ファーゴ』に関して、悩んでいることがあるんです。ここから「ファーゴ=サンタ問題」について具体的に語っていくのですが、純粋に『ファーゴ』を楽しんでいたい人は読まない方が良いかも。そのことこそが、まさに今回のテーマではあるんですが……。

 

 映画かドラマの『ファーゴ』を観たことがあるならば、冒頭の「これは実話である(This is a true story.)」というテロップを目にしたはずです。この言葉は、映画とドラマを含めたファーゴ・ユニバース(造語)を貫くテーマみたいなものになっています。

 

 ただし、このテロップは嘘です。真っ赤な嘘です。罪深いですねぇ。ノア・ホーリーは、すでに41回この嘘を吐いています。いや~、どんどん地獄が近づいてしまう(笑)

 

 『ファーゴ』が実話ではないということは、実は映画のエンドクレジットでも既に明かされています。でも、映画のクレジットをわざわざちゃんと見る人も、そう多くないでしょう。世の中には、『ファーゴ』が実話だと信じている人も沢山いるようです。

 

 問題が起こるのは、そのような人たちに出会ったときです。果たして、『ファーゴ』が実話ではないと知っている人は、そういった人々に『ファーゴ』が実話ではないと伝えるべきなのでしょうか。それとも、知っていながら黙っているべきなのでしょうか。

 

 実話だと信じていられるならば、実話だと信じていた方が面白いのでしょう。あんなことが実際に起こったとは、到底信じがたいのですから。『THE WIRE/ザ・ワイヤー』シーズン5から引用するなら、「The bigger the lie is, the more they believe.(嘘が大きければ大きいほど、人々は信じる)」のです。一旦実話だと言われてしまうと、案外信じてしまったりします。

 

 実在すると信じているなら、その方が面白いという意味で、この問題は「サンタ実在問題」と本質的には同じです。よって、これを「ファーゴ=サンタ問題」と名付けることにしました。この=は等号じゃなくて、ワインバーグ=サラム理論の=みたいな意味です。

 

 知ってしまったことを知らなかったことには出来ません。もしかしたら、この記事を読む前は『ファーゴ』が実話だと信じていた人もいるかもしれませんが、その人には大変申し訳ありませんでした。これからは『ファーゴ』が実話ではないと知っている人間として生きていくことになります。

 

 『ファーゴ』が嘘だと知っているのも、あながち悪いことばかりではありません。まず、冒頭のテロップを壮大なジョークとして楽しむことが出来るようになります。そして――個人的にはこっちの方が重要――ドラマ版『FARGO/ファーゴ』シーズン3を、より深く楽しむことが出来るようになります。

関連記事:海外ドラマ『FARGO/ファーゴ』シーズン3~「真実」の物語とは~ - 海外ドラマパンチ

 

 というわけで、「ファーゴ=サンタ問題」について書いてきました。結局、この問題の解は私にはわかりません。だから、悩んでるんです。最初に書いた通り。結論が出ていないので、自分ではいつも『ファーゴ』は”実話”あるいは「実話」と書くようにしています。この””や「」があることで、どっちとも取れるんじゃないかなと思っているのですが、どうなのでしょう。わかんないや(笑)

 

おしまい。