自己紹介で「趣味は映画です」と言わざるを得ないけど、趣味がないわけではないんだと伝えたい

 趣味はなんですか、と聞かれることは人生の中で何百回とあります。その度に、私は「映画とか海外ドラマです」と答えています。それは全く嘘ではありません。声を大にして言いたいほどの趣味です。実際には海外ドラマの方が熱量が高いけど、映画の方が好きですみたいなフリをたまにしてしまうことがあるにしても。

 

 ただ、映画鑑賞というのは、趣味がそれほどない人がとりあえず言う定番の趣味です。映画がそれほど大衆の娯楽となっていることは嬉しいのですが、そのせいで私自身が「映画が趣味です」と言っても趣味がないのかと思われているような気がします。いや、自分の「映画が趣味です」は、そのレベルじゃないから!

 

 微かな抵抗として、私はいつも「映画が趣味です」という言い方をします。「映画鑑賞が趣味です」とは言いません。映画を漫然と見ているだけではなく、自分の感想を共有したり、他者の感想や批評を読んだりしています。キャストや監督のインタビューを聞いたり、新作映画の情報を積極的に仕入れたりするのが日常です。

 

 そういうニュアンスを初対面の人に自己紹介で伝えるのは至難の業です。「映画鑑賞が趣味です」ではなく「映画が趣味です」と言ったところで、その意味するところは十中八九伝わりません。それなら「映画を観て理解を深めるのが趣味です」とでも言えば良いのでしょうか。これはこれで面倒臭い奴です。

 

 別にライトな映画ファンがいるのは大いに結構なのです。そのおかげで映画産業は成り立っているわけですから。どの程度、映画に触れているかに関わらず、映画が好きなら映画ファンを名乗ることはできます。

 

 所詮、自己紹介なので、趣味を聞くのは雑談のきっかけにしたいからに過ぎません。ライトな映画ファンだろうとシネフィルだろうと、次に聞かれるであろう「好きな映画はなんですか?」という質問に答えられれば十分なのです。

 

 それでも、やっぱり自分は違うんだと示したい。根が面倒臭い奴なんです。ただ改めて考えてみてください。もしも相手もシネフィルだとしたらどうでしょう。私が「映画が趣味です(シネフィル的な意味で)」伝えられたとしたら、一気に仲良くなれるはずです。そういう出会いを心のどこかで期待しているのです。

 

 悲しいことに、実際にはそういう出会いはまずありません。相手が「映画鑑賞が趣味です」と言った後に、試しに私が「どんな映画が好きなんですか?」と聞いたら、ほとんどの場合は、知らない漫画原作邦画かブロックバスター映画の名前が出てきます。見込みがありそうだったらもう少し突っ込んだ質問をしていきますが、なかなかその段階まではいきません。

 

 悩ましい。実にどうでも良い悩みです。こうなったらもう「旅行が趣味です」と言うしかないか。