理系の人間は「アナログ」を「古い」という意味で使わない

  理系の人間は「アナログ」を「古い」という意味で使わない。もしかしたら、ちょっと主語が大きすぎるかな。特に、工学系・物理系の人は「アナログ」を「古い」という意味で使いません。同様に「デジタル」を「新しい」という意味でも使いません。

 

 なぜなら、「アナログ」とは「連続的」という意味で使われる言葉だからです。アナログ時計とは、古い時計という意味ではなく、時間を連続的に表す時計のことです

 

 一方で、「デジタル」とは「断続的」という意味です。例えば、デジタル時計の場合は、12:00:00から12:00:01までの間を表す時間はありません。アナログ時計の場合は、この2つの時刻の間も表すことが出来ます。

 

 この2つの言葉は必ずしも理系用語というわけではないのですが、「アナログ回路」「デジタル回路」のような言葉が理系の分野ではよく使われるため、理系の特に工学系の人間の方が「アナログ」を「古い」という意味では使わなくなります。

 

 もしかしたら、そんなのは当たり前じゃないかと思っている人もいると思います。多くの物事が概してそうであるように、このアナログとデジタルの考え方も、慣れ親しんでいる人にとっては、なんてことはないでしょう。わざわざ取り立てて言うことでもないのです。

 

 しかし、その考え方に慣れていない人にとっては、当たり前ではないのです。そのことを、私たちはしばしば失念しがちです。当たり前、すなわち前提として持っている知識は、人によって異なります。同じような分野の人間であれば、ある程度同じような知識を持っており、これは「共通認識」とされます。

 

 この「共通認識」が、そのグループの中だけのものであることを気を付けなければいけません。誤って、グループ外の人も同じ共通認識を持っているだろうと考えてしまうことは、様々な軋轢の原因になり得ます。

 

 「アナログ」と「デジタル」という単純に見える言葉を取っても、その意味するところが違う場合があるのです。ゆえに、コミュニケーションでの誤解の原因を探るのが困難になってしまうこともあります。誰もが自分と同じ「共通認識」を持っているわけではないことは、常に頭の片隅には置いておきたいポイントだと思うのです。