1位=10点、2位=9点、……10位=1点はおかしいと思う

 先日、Twitter上でオールタイムベスト海外ドラマを問うアンケート調査を行いました。細かい結果は以下の記事で書いているのですが、ここで議論しておきたいのが点数集計方法の妥当性です。

海外ドラマファン330人が選ぶ!歴代最高の海外ドラマベスト50 - 海外ドラマパンチ

 

 多数の人にトップ10を聞いて、それを集計して全体のランキングを作ってみようという試みはしばしば行われています。例えば、映画のオールタイムベストや年間ベストを決めるときです。そういった場合、1位=10点、2位=9点、……、10位=1点というようにそれぞれ加点していき、最終的な合計点数の多い順にランキングを作るのが一般的です。有名どころだと「キネマ旬報トップ・テン」などもそうです。今回もその方法に則って集計結果を出しました。

 

 しかし、改めて考えてみると、この点数方式はあまりにも奇妙で、この方法が世界的に行われていることが不思議に思えるほどです。例えば「あなたの海外ドラマベスト10を挙げてください」と訊かれたとします。そのとき、果たして1位に挙げた作品は、10位の作品の10倍も好きなのでしょうか。

 

 あるいは、同じくらい好きな作品が3つあったとします。そして、しいて順位を付けるなら、これが7位でこれが9位かなと決めたとしましょう。しかし、集計の際には7位(4点)の作品は9位(2点)の作品の2倍の重みを付けられて計算されます。頭の中ではほぼ同じ順位のつもりなのに、それが数値としては反映されていないのです。

 

 1位=10点、2位=9点……という点数方式は、直感的にはわかりやすいものの、回答者の意図をかなり極端に解釈される傾向があります。人間がそこまできっちり順位を付けられるならともかく、実際には悩みつつ、とりあえず順位を付けるならこうかなぁ?といった具合で各自のランキングを作っているでしょう。

 

 そこで、もう少し実際の回答者の気持ちに対応した点数方式を考えてみます。まず、回答者が1位の作品を選ぶとき、それは10位の作品の何倍ほど好んでいるのでしょうか。1位だとダントツで好きだ!という場合もあるので、2位を考えた方がわかりやすいかもしれません。

 

 2位と10位には何倍の差があるのか。厳密な定義はできません。でも、とりあえず従来の点数方式よりましであれば良いのです。例えば、約2倍くらいではないでしょうか。従来方式の9倍というのはあまりにも極端でしたが、それに比べれば2倍というのは比較的現実に即していると感じられるかもしれません。ひとまずこの数値を用いましょう。

 

 別の側面からも考えてみます。10位に入らなかった作品と10位以内の作品には、それほどの差を付けるべきなのでしょう。従来は、10位に入れば1点、そうでなければ0点です。1位と10位では9点差もあるのに、ここには1点差しかありません。実際の場面を考えてみましょう。「あなたのベスト10は何ですか?」と訊かれています。そうしたら、ある作品を10位に入れるか否かは、かなり悩みどころになるのではないでしょうか。7位と8位はどっちでも良いかなと思っても、10位にするかランキング外にするかは熟考するはずです。それならば、10位に入った時点で、ある程度の点数を与えるのが妥当でしょう。

 

 まず提案したいのが、1位=10点、2位=9.5点、……、10位=5.5点とする点数方式です。式で表すなら、s位(1≦s≦10)の作品の点数Psは、

 

Ps=5.5+(10-s)×0.5

 

となります。上述の通り、1位は10位の約2倍、10位以内に入った時点でそれなりの点数が付与されます。

 

 あるいは、もう少し発展させた考え方もあります。先ほど少しだけ触れた「ダントツ」を緩く導入した方法です。7位か8位かはあまり気にしないと書きましたが、1位か2位かはそれなりに気にするのではないでしょうか。つまり、上位の方がより熟考のもとに順位を決めており、信頼性が高いはずです。とするならば、7位と8位の間の点差と1位と2位の間の点差が同じというのも改善しなければなりません。後者の方が大きくなければならないのです。そこで、次のような点数方式はどうでしょう。

 

Ps=2^{0.1×(11-s)}

 

2を底とする指数関数です。この場合、1位=2点、2位=1.87、……、9位=1.15点、10位=1.07点となっています。指数関数なので、上位の方が点差が大きくなっています。微分関数がln2(2^x)であることからも明らかです。この方が、実際の回答者の心理状態により即した点数方式ではないでしょうか。これで計算した場合の上位30本を挙げてみます。

 

第1位『ゲーム・オブ・スローンズ』211.15点

第2位『ブレイキング・バッド』128.64点

第3位『SHERLOCK/シャーロック』87.56点

第4位『クリミナル・マインド』73.27点

第5位『ER 緊急救命室』70.20点

第6位『glee/グリー』68.08点

第7位『ウォーキング・デッド』65.36点

第8位『セックス・アンド・ザ・シティ』61.72点

第9位『フレンズ』58.55点

第10位『ダウントン・アビー』57.23点 3UP

第11位『メンタリスト』56.62点 1DOWN

第12位『ストレンジャー・シングス』54.77点 1DOWN

第13位『ベター・コール・ソウル』50.21点 1DOWN

第14位『プリズン・ブレイク』49.59点

第15位『デスパレートな妻たち』49.44点 1UP

第16位『CSI:科学捜査班』45.44点 2UP

第17位『スーパーナチュラル』45.19点

第18位『ビッグバン・セオリー』44.48点 3DOWN

第19位『24-TWENTY FOUR-』40.84点

第20位『パーソン・オブ・インタレスト』37.78点 2UP

第21位『ゴシップガール』37.71点 4UP

第22位『HOMELAND/ホームランド』36.93点 3DOWN

第23位『X-ファイル』35.66点 2DOWN

第24位『ザ・ボーイズ』34.38点 4UP

第25位『HANNIBAL/ハンニバル』32.14点 2DOWN

第26位『刑事コロンボ』31.95点 2DOWN

第27位『THIS IS US/ディス・イズ・アス』30.54点 2UP

第28位『フルハウス』30.37点 2UP

第29位『グレイズ・アナトミー』29.96点 2DOWN

第30位『TRUE DETECTIVE/トゥルー・ディテクティブ』29.44点 4UP

第31位『アリー my Love』29.41点 6DOWN

 

 まず気づくのが、25位の同列順位がなくなっていることです(物理学者なら”縮退が解けた”と言うところです)。以前は『アリー my Love』と『ゴシップガール』が同じ点数でしたが、今度は『アリー~』が31位、『ゴシップガール』が21位になっており、その間には10位もの差が開いています。これは、原理のところで述べたように、個人ランキングでの上位と下位で点数間隔が異なっているからです。

 

 果たして、これが元の点数方式のときと比べてより正確なのかどうかは、結果を見てもよくわかりません。正確なランキング結果というものがこの世に存在しないので、方法・原理から納得するしかありません。

 

 ここでは数多くの仮定をもとに計算式を考えていきました。係数などの、その都度適当に決めているので、まだまだ考察の余地はあります。それでも、従来よりもマシなものという点ではそれなりに有効な方法なのではないでしょうか。

 

 これ、結局何をやっていたかというと、従来のランキング点数方式に行動経済学的なアプローチを試みたということです。たぶん。人間は1位=10点、2位=9点……というような厳密な思考でランキングを決めるだろうと考えるのが従来の経済学で、いやそうではなくて、もっと実際の人間心理に即した考え方をしてみようというのが行動経済学といったところでしょうか。ちゃんと学んだことはないので、イメージで言っているだけですが。

 

おしまい

 

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