現代文は、一番やっかいな入試科目かもしれません。試験の時に国語の授業で習ったことは全く役に立たず、国語ができる人に勉強法を聞いても「フィーリングで解いてるだけ」と言われてしまいます。
特に理系の人の場合、せっかく理系科目ができても、現代文のせいで点数が伸び悩んでしまうことがありえます。そんなの正直言って耐えられるものではありません。私も同じ思いをしていました。高校入試は国語が原因で失敗したと言っても良いくらいです。
そこで、私は高校に入ってから、現代文の勉強法を刷新しました。そのおかげで、もう現代文が足を引っ張ることはなくなりました。参考までに、某都道府県の公立高校の入試を受けたときは、国語の点数が60点台後半だったと思います。それが、センター試験の現代文では100点中87点でした。過去問を解いているときも安定して80点以上は取れていたので、理系にとっては十分な実力です。
今回は、そのエッセンスを紹介します。具体的な勉強法は目標とする試験や教育指導要領によって変わりますが、エッセンスは変わらないはずです。なお、ここでは主に大学入試を想定して話をしていきますが、高校入試に関してもそれほど内容は変わりません。
理系にとっての現代文
理系の場合、現代文の取り扱いに困りすぎて、勉強しないという人も少なくありません。そうしたくなる気持ちはよくわかります。国語の授業を聞いていても、もっぱらフィーリングみたいな話ばかりしていて、点数に直結することは全くやってくれません。それなら運を天に任せるしかないのかという気持ちになってしまうかもしれません。
でも、現代文を無視できないのもまた事実。共通テストでは、国語の半分が現代文です。つまり、5教科7科目を受験した場合、900点中の100点が現代文になります。しかも、現代文は問題数が少ないので、1問あたりの配点が大きくなっています。読解問題の場合、1問あたりの点数は6~8点となっており、合否に直結する可能性すらある配点です。
だから、理系であっても現代文を軽視するわけにはいきません。現代文で高得点を取る必要はありませんが、安定した点数を取ることは大事です。そうすれば、余計なことに気を取られずに、数学や理科で思う存分、力を発揮することができます。だからこそ、現代文をフィーリングで解くなどというのは言語道断なのです。
入試現代文とは
入試の現代文は、特に作家たちから常に非難を受けている科目でもあります。誰もが現代文の入試に意味はないと思っており、清水義範の風刺的な短編小説『国語入試問題必勝法』は、吉川英治新人文学賞を受賞しているほどです。それほど、入試「現代文」はナンセンスなものだという共通認識が作家たちの間でもできあがっています。
そのため、第一原則として、本を読めば現代文が解けるようになると考えるのはやめましょう。本を読むのが好きなら思う存分読めば良いですが、そのおかげで現代文の問題が解けるようになることはありません。もし、そもそも文章を読むことが苦手で、入試の問題の文章を読むのも一苦労だというのであれば、多少なりとも本を読んで文章に慣れるべきだとは思いますが、そうでなければ大丈夫です。
入試の現代文は、文章をよく楽しむためのものではありません。しかし、国語の先生たちは多少なりとも本を読むのが好きで教えているので、本を読むことの楽しさを教えてくれようとします。あるいは、本を読むことで、何かしらの学びを得ることを期待していたりします。
前者は作家なら喜ぶでしょうが、入試の役には立ちません。後者は学習指導要領には沿っているかもしれませんが、やはり入試の役には立ちません。しかも、読書の楽しさを教えるには、どちらも役に立ちません。私は、今も昔も推理小説を読むのが大好きですが、国語の授業ではそういったジャンルの小説が全く扱われないので、国語は好きではありませんでした。
入試現代文が求めていること
入試現代文の問題が求めている能力は基本的に一つだけです。選択問題の場合も記述問題の場合も、文章中から根拠を探し出して、それを的確にまとめられる能力を試しています。それだけです。
具体的には、こんな解き方があります。選択問題の場合は、選択肢の文章を要素ごとに区切り、一つずつ文章の中に対応する単語が入っているかどうかを確認します。所詮、正解の選択肢は問題文の言い換えに過ぎないので、的確に言い換えられているかどうかさえ確かめれば良いです。
記述式問題の場合は、傍線部の直前を上手い具合に言い換えながら制限文字数以内でまとめればOKです。上手い具合の言い換えがわからなかったら、文章中の単語をそのまま使っても大丈夫です。それだけでも、意外にちゃんと点数がきます。
入試現代文の勉強法
理系は現代文を軽視しがちで、演習をほとんど行わない人もいます。でも、現代文も入試科目である以上、対策を全くしないのは危険です。まずは、簡単なもので良いので、現代文の問題集を一つ買ってやってみましょう。旺文社の『全レベル問題集 現代文』のレベル1と2などが良いかもしれません。
まずは、普通に問題文を解きます。そして、丸付けをします。間違えた問題は、解説もしっかり読んでみましょう。こういった解説は、国語の授業では全然教えてくれない入試現代文のコツを、さらっと簡潔に教えてくれることがあります。
それが終わったら、問題文の要約ということをぜひ毎回やってみてください。つまり「この文章の内容を200字以内で要約しなさい」という問題があると思って、実際に書いてみるのです。これは、現代文の力を付けるのに最も確実な方法の一つです。なぜなら、この方法では、入試現代文がもとめる「文章中に根拠を見つける力」と「文章をまとめる力」をともに鍛えることができるからです。
問題集を1回解き終わったら、もう1回解いてみましょう。数学の問題集は何回もやるのに、国語の問題集は1回しかやらないというのでは、筋が通りません。実際、現代文の問題は、改めて読んでみると、文章の要旨がすっと頭に入ってきて、理解度が抜群に上がります。問題の答えを薄々覚えていたとしても、このプロセスは意味のあることです。
これだけで十分です。現代文の勉強は、高1や高2でも全然できるので、余裕があるときに早めにやっておくのが吉です。3年になったら否応なく数学と理科の勉強に時間を割かざるを得ませんし、そうすべきであるからです。それに、この程度の現代文の勉強であれば大して時間も掛からないので、気軽に始めることができると思いますし、上手くいかなかったとしても、損にはなりません。始めなかったら、いつまで経っても不安定な現代文の点数に振り回され続けるだけです。