この海外ドラマが気になる<2022年11月>と一挙配信vs週一配信の話

 最近の海外ドラマって本当に面白いなと改めて感じます。平均点が高い。中にはつまらないものもありますが、それでも何かしら一つぐらいは優れたところがあったりします。しかも、作品数が本当に多いですから、上手い具合に自分の好みの作品を見つけていければ、観たドラマ全部面白いなんてことも十分あり得るわけです。良い時代ですね。ということで、今月の気になる作品とともに、先月観て面白かったドラマの総括、さらに一挙配信vs週一配信などしていきます!

 

 

気になるドラマ

『ペリフェラル~接続された未来~』シーズン1 Amazon 毎週金曜

『ドクター・フー』シリーズ13 Hulu 11月3日

『イルマ・ヴェップ』リミテッド U-NEXT 11月3日

『神話クエスト』シーズン3 Apple TV+ 11月11日~

『スーパー・パンプト/Uber-破壊的ビジネスを作った男-』シーズン1 U-NEXT 11月11日

『1899』シーズン1 Netflix 11月17日

 

 近未来SFドラマ『ペリフェラル』は、すでに最初の3話が公開されていますが、実に良いスタートを切っています。散りばめられたミステリーと未来すぎない未来観が気に入っています。ストーリーに関してはまだなんとも言えませんが、シーズン1の中である程度、いくつかの謎がきちんと解決されるならば、素晴らしいドラマになるでしょう。

 

 Huluでは、待望の『ドクター・フー』シリーズ13が配信開始。「FLUX」というサブタイトルが付けられ、全6話で大きな話が展開するとチラッと聞いた気がします。ただし、本来はシリーズ12とシリーズ13の間に「Revolution of the Dareks」というスペシャル・エピソードがあるのですが、どうやらこちらは配信されないようです。これは残念。

 

 Uberの創業からスキャンダルまでを描いた『スーパー・パンプト』は、ずっと楽しみにしていたドラマです。Netflixで配信中の金融ドラマ『ビリオンズ』の製作陣が手掛けているということで、もう面白そう。主演はジョセフ・ゴードン=レヴィット。ユマ・サーマン、カイル・チャンドラーらが出演し、クエンティン・タランティーノがナレーターをしています。すでに原作は読んでいるのですが、これはとんでもない実話ですよ。

 

 新作Netflixドラマ『1899』は、『ダーク』の製作陣が贈るSFミステリー。すでに期待値は爆上がりです。『神話クエスト』は、あまり知られていませんが、実はApple TV+で一番面白いドラマです。シーズン3もとても楽しみにしています。『イルマ・ヴェップ』は、気楽に観ていきたいと思います。

 

2022年10月ベスト5

 10月に観たドラマは全部で9シーズン。その中からベスト5をサクッと紹介します。一応、順位は付けましたが、この5本はどれもとても面白かったです。

 

1位『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン1 U-NEXT

2位『バッド・シスターズ』シーズン1 Apple TV+

3位『シャイニング・ガール』シーズン1 Apple TV+

4位『WE OWN THIS CITY-不正と汚職が支配する街-』リミテッドシリーズ U-NEXT

5位『セックス・ピストルズ』リミテッドシリーズ Disney+

 

 『ゲーム・オブ・スローンズ』の前日譚ドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、ドロドロの人間関係が楽しい。こんなに刺激的なドラマは、やっぱりウェスタロスにしかありません。『バッド・シスターズ』は、クソ男を殺そうとする姉妹の話で、基本的にはブラックコメディ。でも、ミステリー要素も面白かったですし、姉妹の強い絆には泣かされそうになることもしばしばありました。

 

 同じくApple TV+の『シャイニング・ガール』はやたら複雑なSFミステリーなのですが、訳が分からないなりに続きが気になって、とても面白かったです。HBOの名作ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』の製作陣が集結したドラマ『WE OWN THIS CITY』は、ほとんど『THE WIRE/ザ・ワイヤー』の精神的な続編です。それだけでも満足なのですが、ジョン・バーンサルのクズっぷりが良い。いや、悪いんだけど、良いんだ。

 

 セックス・ピストルズをほとんど知らなくても、ダニー・ボイル監督のドラマ『セックス・ピストルズ』は面白かった。今は、ちょうど英国女王が亡くなったばかりのタイミングで、王室のあり方が再び疑問視されていたりもするのですが、そんなときにピストルズのGod Save The Queenを聴くのは、趣があります。

 

 おまけで『フィラデルフィアは今日も晴れ』シーズン5も。ダニー・デヴィートがスキニージーンズを履いてるだけで爆笑してしまうからズルい。

 

 

ベストな配信ペースとは?

 動画配信サービスとテレビ放送の最も違う点の一つが、ドラマを一挙配信して、視聴ペースを完全に視聴者に委ねることができる点です。Netflixがこの手法を確立してから、後発の動画配信サービスもオリジナル作品は一挙配信していました。しかし、最近、旧来のテレビ放送のように、毎週一話ずつ新エピソードを公開する形式が増えてきています。

 

 Netflixは今もすべてのオリジナル作品を一挙配信していますが、Apple TV+は基本的に週一配信を採用しています。Amazonプライムビデオは、話題作は週一配信、話題にならなそうな作品は一挙配信しています。例えば、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』『ザ・ボーイズ』は週一、『ペーパーガールズ』『プリティ・リーグ』は一挙配信でした。HuluやU-NEXTもAmazonと同様の方針を取っています。

 

 週一配信のメリットは、作品に関する話題をできるだけ引き延ばせることです。1週間あれば、作品に関する考察がネット上で繰り広げられたりもして、一挙配信よりも盛り上がります。HBOの『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は、テレビ放送なので実質的に週一配信ですが、放送日には毎週#HouseoftheDragonなどの関連ハッシュタグがツイッタートレンドの上位に上がりました。

 

 週一配信には、別のメリットもあります。つい最近の『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』の場合、初週はキャストの人種をめぐって喧々諤々の言い争いがSNS上で勃発していましたが、最終週ともなると、ちゃんとドラマの内容に関する感想で溢れるようになりました。もしも一挙配信していたら、醜いSNSの争いのことばかり印象に残ってしまったかもしれませんが、週一配信をしてくれたおかげで、ドラマをより良い形で楽しむことができたのかなと思います。

 

 ただし、どちらもSNSに関連したメリットです。SNSをやっていない人にとっては、どちらのメリットも大して関係ありません。むしろ、一挙配信してもらって自分のペースで観られた方が良いはずです。週一だと、観るのを忘れたり、先週のエピソードの内容を忘れてしまったりするデメリットがありますから。

 

 配信元としても、エピソードを観るのを忘れられるよりは全部観てもらった方が良いはずなので、SNSで話題にならなそうな作品は一挙配信してしまうのかなと考えられます。また、Netflixが一挙配信にこだわる理由としては、視聴者に作品世界に没頭してイッキ見してほしいからだと、どこかで言っていました。

 

 そういうNetflixも、近いうちに方針を変えるんじゃないかと思います。11月からNetflixは広告付きの割安プランを始めます。広告があったら作品世界に没頭できるわけがなので、これまでは断固として広告を入れてこなかったのですが、業績悪化が響いてポリシーを曲げたようです。

 

 加えて、Netflixは最近、一挙配信のポリシーに反する配信の仕方を試しているようにも見えます。昨年秋に配信されたアニメシリーズ『アーケイン』は、毎週3話ごと公開されました。今年に入ってから配信された『オザークへようこそ』シーズン4と『ストレンジャー・シングス』シーズン4は、ともに2部構成になっており、前半を公開してから数ヶ月後に後半を公開しています。この配信スケジュールは、明らかに「作品世界に没頭」することとは関係なく、話題性を重視したものです。

 

 視聴者がどう思おうと、今後は週一配信が主流になっていく可能性が高いと思います。私もSNSをやっているので、確かに週一配信の方が視聴者にとってもメリットは大きいのかなと感じます。一方で、この前『シャイニング・ガール』をイッキ見して感じたのは、SFやミステリーといったジャンルは特に前回のエピソードを忘れる前に全部観てしまった方が、作品世界にも集中できて良いのかなということです。どっちもどっちですね。

 

おしまい