誰の参考にもならない英語学習法~海外ドラマを観ていれば英語ができるようになるのか?~

 自分は結構英語の試験が得意です。英語が得意とは言いません。英語を喋ったり書いたりすることには自信がありませんから。でも、この前のTOEIC L&Rでは、対策本を一冊もやらずに970点を取ることができました。なお、私は帰国子女ではないどころか、日本国外に出たことが一度もありません。

 

 なぜ、こんなに良い点数を取ることができたのでしょう。いくつか心当たりはあるのですが、その中の一つが海外ドラマを観て英語を勉強する方法です。これは、比較的よく知られた英語学習法の一つではないかと思います。都合の良いところだけ切り取れば、確かに私は「海外ドラマを観るだけでTOEICで950点以上取ることができた人」です。でも、おそらくそんなに単純な話ではありません。

 

 今回は、私の英語学習遍歴を中学時代から現在(大学時代)まで振り返り、自分がなぜ英語の試験で良い点数が取れるようになったのか考察し、海外ドラマで英語を学習することが本当に効果があるのかどうかを検証していきます。

 

 

 

中学―基礎の基礎は大きな太った猫―

 まず最初に、私は英語の英才教育を受けた人ではありません。一応、小学5~6年生のときに週一で英語の授業がありましたが、ほとんど英語で遊んでいるだけでしたね。ちゃんとした英語学習を始めたのは、中学校の英語の授業から。最初の頃は、もちろん簡単な英単語も書けませんでした。

 

 その後も、英語に関して受けたのは学校の授業のみです。塾や英会話学校などで英語の授業を受けたことは一切ありません。これで、センター試験の頃には190点台を取っていました。よっぽど学校の授業が良かったのか、自分の勉強法が偶然にも良かったのか。前者の可能性を否定するのは心苦しいですが、同級生と比べても英語試験の点数が良かったことを考えれば、後者の可能性を取らざるを得ません。

 

 それでは、自分ではどんな勉強をしてきたのでしょう。最初は、中学生の頃。学校指定ではない2冊の参考書をやっていました。文法書の『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』と単語帳の『中学英単語をひとつひとつわかりやすく』です。『ビッグ・ファット・キャット~』は文法書とは言っても、そのタイトルの通り、内容はとても易しく、直感的に英語を理解する基礎を教えてくれます。しかも、英語の本質的なところはしっかり押さえられています。この本だけで、自分の文法学習の7割は終わったと言って過言ではありません。

 

高校―受験英語なんか嫌いだ!―

 高校に入ってからは、主に学校指定の参考書を使うようになりました。参考書の内容で小テストをやったりしたので。英単語帳は『新ユメタン1』『新ユメタン2』、文法書は『Vintage』、受験英語用に『英文解釈の技術100』を使いました。『ユメタン』は同級生の間では評判が悪かったのですが、自分はこれしかやりませんでした。英単語帳を何冊もやるよりは、同じ本を何十回でも繰り返しやった方が絶対に身につきます。『Vintage』も何十回もやっていました。

 

 何十回もやる、というのは口で言うのは簡単ですが、実行するにはちょっとした工夫が必要です。習慣化する必要があります。自分は、高校まで通学するのに30分ほど電車に乗る必要がありました。朝と夕の2回あるのですが、このうち朝の30分は絶対に『ユメタン』か『Vintage』をやると決めていました。習慣にしてしまえば、その時間は暗記の勉強をするのが当たり前だと思い込み、他のことをする選択肢は自然と消えてくれます。

 

 そんな調子で単語帳と文法書を暗記していったのですが、どうしても嫌いだったのが文法解釈の本でした。これは、大学受験の英語で出てくるような複雑な構文を適切に訳すために、いくつかのパターンを覚えるというものです。「受験英語」という概念が大嫌いだった自分は、まさに受験にしか使えないような構文解釈には全く気乗りがしなかったのです。そのなのに、学校の宿題としてはやたらたくさん出されたので、仕方なくやることにはやりました。

 

 これで、センター試験で190点台を取ることができたのでしょうか。そうではありません。確かに、これらの参考書をやれば、単語力と文法力に関しては十分だと思います。これだけでは、英文読解力とリスニング力の要素が全くありません。自分が一番得意としていたのは、実はこの2分野です。学校の勉強や宿題では、もちろん英語長文やリスニングの課題も出されましたが、それだけでは不十分だったでしょう。かといって、参考書で勉強したわけでもありません。

 

Dlife―数えきれないほどの再放送―

 ここからが、本当に誰の参考にもならない英語勉強法です。始まりは、2012年3月17日です。この日から、自分でも気づかないうちに英語を勉強することになり、結果的に英語を理解する能力が上がりました。

 

 2012年3月17日に、BSでDlifeという無料チャンネルが開局しました。海外ドラマやバラエティ、ディズニー系のアニメ、若者向けコメディなど、他局では珍しい海外系の番組を常に放送していました。このとき、自分はちょうど小学校高学年か中学生ぐらいでした。

 

 中でも『フィニアスとファーブ』が最初のお気に入りでした。でも、アニメを吹替で見ていると子供っぽい(※個人の意見です)ので、字幕で観ていました。このアニメの特徴と言えば、毎回ほとんど同じ話をやっていることです。展開が完全にわかっていますし、毎回お決まりのセリフが10個ぐらいあります。それなのに面白いのが不思議なのですが、英語学習の観点から言えばこれほど望ましい題材はありません。繰り返しこそが英語学習の肝です。さらに、Dlifeでは短いスパンで再放送をすることが多く、『フィニアスとファーブ』は合計10回ぐらい放送しているエピソードもあったんじゃないかというぐらいです。それほど観ていれば、自然と覚えてしまうセリフもありますし、耳もかなり英語に慣れてきます。

 

 それ以外のアニメやディズニーチャンネル系のドラマでも同じことをやっていました。当時の自分は、それをほとんど英語学習の一環だとは思っておらず、単に面白いから観ていただけなのですが、結果的にはリスリング力の向上に大きな効果があったのだと思います。

 

 なぜ、この英語勉強法が誰の参考にもならないかというと、Dlifeは2020年3月に閉局してしまったからです。今後、何度も何度も『フィニアスとファーブ』を放送するテレビ局が出てくるはずがありませんから、同じ勉強法を誰かが行うことはもうできません。

 

大学―海外ドラマを見まくる―

 ただし、この話には続きがあります。大学に入った頃にはもうDlifeを観ていませんでしたが、それでも英語試験のスコアは上がり続けました。大学でも英語の授業はありましたが、自分は理系なので、それほど大した授業ではありませんでした。英単語帳も文法書も開いていません。つまり、大学に入ってからも英語力が伸び続けたのには、Dlifeでも授業でもない別の要因があったはずです。

 

 もったいぶって書きましたが、やっていることはDlifeがあったときとさほど変わっていません。AmazonプライムビデオやNetflixに変わっただけです。今も海外ドラマや海外映画が好きなので、日常的に多くの英語作品を観ています。ただし、自発的に同じ作品を何回も観るということは、最近はしていません。

 

 もうちょっとレベルを上げたことはやっています。初見の作品を英語字幕で観るということです。これも、英語学習のためではなく、観たい作品に日本語字幕が付いていなかったので、仕方なく英語字幕で観なければならなかったからでした。そうしたら、案外、内容をちゃんと理解できました。初めて英語字幕で観たのは『アントラージュ★オレたちのハリウッド:ザ・ムービー』という、同名コメディドラマの劇場版でしたから、内容が理解しやすかったというのはあると思います。

 

 そうすると今度は、どうせ英語字幕でも理解できるんだったら、日本で観られない作品のDVDを海外から輸入して観れば良いじゃないかと考えるようになります。それを最初にやったのが『The IT Crowd』というイギリスのコメディドラマでした。今でも大好きなシットコムです。

 

 あるいは、YouTubeで俳優のインタビュー動画も観るようになりました。TEDトークの方が英語学習には良いのかもしれませんが、ハリウッド俳優が適当にジョークを交えて話している方が自分にとっては見やすいです。

 

 ここまでくれば、あとは自分の好きなコンテンツを英語で楽しめるようになるので、自然と英語に触れる時間も増えます。努力する必要すらありません。好きなことをやっているだけで、英語力が伸ばせます。

 

まとめ―英語ができるようになるために―

 これが、自分の英語学習法です。結果的には、しばしば言われているような海外ドラマで英語を学ぶ方法を提唱しているだけに見えるかもしれません。でも、「それなら海外ドラマを観ていれば英語が出来るようになるのか!」と早合点してほしくはありません。

 

 自分は、中学・高校時代に英単語の学習をそれなりにちゃんとやっています。文法もやっています。基礎に関しては、オーソドックスな方法で学んできました。『フィニアスとファーブ』はあくまでもリスニング力向上に寄与しただけ、しかも何度も何度も繰り返し観たことで効果を発揮しています。

 

 大学に入ってからも海外ドラマで英語力が向上したと書きましたが、私が海外ドラマを観ている量は、我ながら異常です。1日3話は当たり前、5話や6話観るときも少なくありません。趣味が高じて「海外ドラマパンチ」なんていうブログをやっているほどです。たいていの場合は日本語字幕で観ていますが、英語字幕のときもペースは変わりません。

 

 あなたが相当な海外ドラママニアであれば、私のような英語学習法は効果があるかもしれません。でも、そうでないなら、海外ドラマを観るだけで英語力が上がるなどと安直に考えてはいけません。まずは、海外ドラママニアにならなければいけないのですから。そのお手伝いなら、いくらでもしますよ???

 

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