学生最強のクイズ王を決める日本最大級のクイズ大会「abc/EQIDEN」の楽しみ方

 テレビでは数々のクイズ番組で芸能人や東大生がクイズをしているのを見ることができますが、真のクイズ王は別のところにいます。それは、毎年3月に行われる「abc」という名のクイズ大会です。

 

 abcは、学生クイズの最高峰の大会の一つとされ、ここで優勝した者こそが真のクイズ王と言っても過言ではないでしょう。今回は、そんなクイズ大会abcについて書いていきます。

 

 ここでは、これまでabcに3回参加してきた私の視点から、競技クイズを全く知らない人でもabcがどのような大会なのかわかるように紹介します。私には、abcの勝ち方を教えることはできませんが、abcの見方/楽しみ方ならば知っています。そもそも競技クイズとは何なのか?から、会場に行かなくてもabcを楽しむ方法、クイズのルール、そしてabcの醍醐味をまるっと紹介していきます。

 

 

競技クイズとは?

 クイズ大会のabcで競われるのは、競技クイズです。しかし、そもそも「競技クイズ」とはなんでしょう?

 

 競技クイズは、テレビ番組のクイズとは違います。テレビのクイズでは、映像や画像を使ったクイズが多く、謎解き要素を含む問題もあります。いわばバラエティっぽいクイズです。一方、競技クイズには、これらの要素は一切ありません。

 

 競技クイズにもいくつか種類がありますが、最も一般的な早押しクイズは以下のようなものです。まず「問読み」という人が問題を読み上げ、その途中で最もボタンを早く押した人が解答権を得ます。そして、何かを答えると、正解か誤答になります。それだけです。これを何度も繰り返します。問題文が画面に出たりすることはありません。画像も使いません。

 

 そのため、競技クイズはテレビクイズと比べると、ビジュアルとしてはずっと地味です。とにかく解答者の知識量と早押し技術を眺め、感嘆するのです。クイズを始めたばかりの頃だと、強いクイズプレイヤーの”凄さ”がいまいちわからなかったりするのですが、ひとまずabcを見てみてください。クイズに詳しくても詳しくなくても楽しめるのが、abcですから。

 

abc/EQIDENとは?

 abcとは、毎年3月に行われる学生クイズ最大の大会です。大学4年生以下のみが出場できます。キャッチコピーの「新世代による基本問題実力No.1決定戦」の通り、出題される問題は基本的なものばかり。クイズを全くやったことがない人でもわかる問題も多く出題されます。

 

 EQIDENは、abcと同時に行われる団体戦です。EQIDENは「エキデン」と読みます。キャッチコピーは「学生サークル早押しクイズ日本一決定戦」。abcが個人戦であるのに対し、EQIDENでは各学校のクイズサークルからそれぞれ5~10人ずつが出場し、チーム戦でクイズをします。

 

 大まかな日程としては、午前中にabcの筆記クイズが行われ、昼に団体戦のEQIDENが行われ、夕方から夜にかけてabcの続きが行われます。abcの参加者の中にはEQIDENに参加しない人もいます。

 

abcを観るには?

 abcに参加したい人は、所定の申し込みを行ってください。1~2月ぐらいに受付をしています。申し込みをすれば、必ず参加できます。参加すれば、どれだけ勝ち上がれるかには関係なく、決勝まで見届けることができます。ウルトラクイズのように、敗退したら帰宅する必要はありません。

abc/EQIDEN公式サイト Home :: abc/EQIDEN

 

 それ以外でも、近年はabcを観る方法があります。第18回(2020年)大会から、abcはライブ配信されるようになりました。有料配信で、1,000円ぐらいで視聴することができます。日本最高峰のクイズ大会を1,000円で見られるなら、安いものではないでしょうか。全部で5時間ぐらいあります。視聴方法は、公式SNSやサイトで確認してください。また、一部は公式YouTubeでアップされいます。

abc EQIDEN公式チャンネル - YouTube

 

 それ以外に、大会の様子を記録したDVDの販売もあります。問題集も発売されています。問題集には、abcおよびEQIDENで出題された問題と出題される予定だった問題が合わせて1,000問以上載っています。良問しかないので、これから競技クイズをやってみたいという人にとっては必読です。これらは、クイズ問題集販売サイト「Q宅」などで販売されています。

クイズ宅配便(Q宅) ~ 競技クイズ・クイズ大会・例会企画・個人の問題集を一冊からお届けしています!

 

abcの基本ルール

 abcのルールは、年によって異なります。ここでは例年のルールをざっくり説明するだけなので、詳しいルールを知りたい人は公式サイトなどを見てください。

 

1st Round 筆記クイズ【全員参加】

 100問の4択クイズと100問の筆記クイズに、それぞれ制限時間20分で解答します。4択クイズはマークシート方式、筆記クイズは問題の答えの単語を自分で書きます。これは、皆さんも自宅で時間を計りながら過去問(abc/EQIDEN公式問題集に掲載)を解いてみるとわかるのですが、20分というのはかなり短いです。

 

 ここから勝ち上がれるのは上位48人のみ。近年のabcの参加者数は、少なくとも500人は超えるので、倍率は優に10倍以上。最も参加者数の多かった第17回大会(2019年)には848人が参加したので、倍率は約17.7倍。東大入試の倍率よりはるかに高いです。

 

 筆記試験のボーダー点数はだいたい70点台後半になることが多いです。もし、自分で過去問を解いてみて、80点以上が取れるようなら、あなたは相当なクイズプレイヤーです。

 

2nd Round 5〇2×【48人】

 2nd Round以降に出場できるのは、1Rの激戦を勝ち上がった強者クイズプレイヤーだけなので、ざっくりした説明だけをします。2Rでは、48人が12人ずつの4グループに分けられ、それぞれで5問正解で勝ち抜け、2問誤答で失格の早押しクイズ(5〇2×という)をします。各組で、5人が勝ち上がれます。

 

3rd Round コース別【20人】

 2Rを勝ち上がった20人は、5人ずつ4グループに分けられ、各グループで異なったルールの早押しクイズを行います。勝ち上がれるのは、各組から2人のみ。実施されるルールは年によって異なりますが、10by10、10UpDown、Swedish10などが行われることが多いです。ざっくり言えば、どれもだいたい10問正解すれば勝ち抜けられます。

 

Extra Round 敗者復活戦【全員-8】

 ここで、再び全員にチャンスが巡ってきます。3Rを勝ち残った8人を除く全員が参加します。1Rで落ちた人も対象です。敗者復活戦は、2ステップに分けられます。

 

 1st Stepでは、全員が読み上げペーパークイズに参加します。問読みの人が問題を一問ずつ読み上げるので、参加者は手元の解答用紙に答えを書きます。1問でも間違えたら、その時点で失格。これを何問か繰り返し、最終的に12人以下になるまでやります。

 

 2nd Stepは、生き残った12人で5〇1×の早押しクイズをします。これを勝ち抜いた1人がSemi Finalに進出できます。倍率で言うと、第17回大会のときは840倍です。1Rのペーパークイズで勝ち残るよりも至難の業です。

 

Semi Final タイムレース【9人】

 3Rを勝ち上がった8人と敗者復活の1人の合わせて9人早押しクイズをします。タイムレースとは、問題が制限時間内で矢継ぎ早に出題される形式のクイズです。解答者が答えたら、それが正解か不正解かによらず、次の問題が読まれます。頭を休める暇がありません。

 

Final トリプルセブン【3人】

 Semi Finalを勝ち上がった3人が、決勝で早押しクイズをします。トリプルセブンは、最大7セットで行われます。最初のセットは7〇1×、次のセットは7〇2×、その次は7〇3×……とやっていき、最初に3セットを勝利した者が優勝です。

 

第18回大会(2020年)の決勝の様子

www.youtube.com

 

abcの醍醐味

 abcで出題される問題は、基本問題ばかりです。知識がある人ならば、多くの問題の答えはわかります。では、この大会の意味とは何なのか? それは「早押しクイズ」の純粋な面白さを見せてくれることです。

 

 例えば、こんな問題があったとしましょう。過去にEQIDENで出題された問題を少し言い回しを変えて掲載します。abcに限らず、競技クイズではよく出題される問題です。

 

Q. 日本では99%を超えているとされる、人口に対して文字の読み書きができる人の割合を何と言うでしょう?
A. 識字率

 

 問題文を全部聞けば、答えがわかる人も多いと思います。ただし、これは早押しクイズです。できるだけ早くわかることが肝心です。この問題の場合は「日本では99%を超えている」というところまで聞けば、それなりのクイズプレイヤーには答えがわかります。なぜ、これだけでわかるのかと言えば、

 

・わざわざ「日本」と言っている→他の国と比較することができる

・「99%を超えている」→ほぼ全員が該当するが全員ではない

・クイズっぽい用語が答えになるはず

 

という理由からです。これらの考察から、残りの問題文を予想して「識字率」という答えを導きます。

 

 論理的には、日本で99%を超えているものだったら、識字率以外のものも答えになり得ます。例えば「生涯で白米を一度でも食べたことがある人の率」も、もしかしたら日本で99%を超えているのかもしれません。しかし、これがクイズの答えになるとは考えにくいでしょう。論理的な思考も必要ですが、それよりは直感や勝負強さも大事な要素です。

 

 これで終わりではありません。クイズプレイヤーはさらに速さを追求します。「日本では99%を超えている」で答えがわかるなら、「日本では99%」だけでも十分ですよね。さらに攻めるなら「日本ではきゅ」だけでボタンを押しても良いかもしれません。

 

 ただし、あんまり早くボタンを押してしまうと、必要な情報が十分得られません。「日本で」で押してしまったら、答えが「富士山」や「水戸光圀」になる可能性だってあります。

 

 これが面白いところです。このレベルの問題ならば、abcの2nd Round以上に進出している人は、必ず答えを知っています。でも、その中で一番早くボタンを押さないと意味がありません。2位じゃ駄目なんです。デタラメに早く押せば良いわけでもありません。必要な情報を聞いた上で、一番早く押すのです。これが、早押しクイズならではの勝負です。

 

 ここまで、技術のことばかり書いてきましたが、知識量も非常に重要です。そもそも、知識がなければ始まりません。先ほどの問題でいえば、日本の識字率が99%以上で、100%ではないことを知っていないと、早く押すことはできません。幅広い知識があることは、早く押すために重要なことです。

 

まとめ

 競技クイズに興味がある学生の皆さんは、ぜひabcの舞台を目指してみてください。1st Roundを勝ち抜けるだけでも超難関ですが、努力をすればもちろん可能性はあります。並大抵の努力では足りませんが、その先に見える景色は特別なものでしょう。

 

 たとえabcの舞台に上がれないとしても、これほど面白いクイズ大会はありません。日本最高のクイズプレイヤーたちがガチンコでぶつかり合っているのを目の当たりにすることができます。こんな戦い、他のところでは絶対に見ることができません。